人材育成とはそもそも何か?次世代人材の育成方法とは

人材育成とはそもそも何か?次世代人材の育成方法とは

シリーズ:
これからの時代の人材育成

ビジネスのボーダレス化・グローバル化が進み、ジェンダーや働き方など様々な価値観のアップデートのスパンが飛躍的に短くなってきています。
これまで以上に企業活動にイノベーションが必要とされる現代、人材育成とはどうあるべきかを読み解くためには基礎をしっかりと知っておくことが重要です。
本コラムでは、人材育成の考え方の基本について4回にわたって解説します。


第1回 「企業を悩ませる人材育成の現状と課題 取り組むべき対策もあわせて解説」
第2回 「企業における戦略的な人材育成のポイントとは?」
第3回 「人材育成における適切な目標設定とは?」
第4回 「人材育成とはそもそも何か?次世代人材の育成方法とは」

企業を組織として継続させていくためには、安定した世代交代がスムーズにくり返されていく必要があります。
かつての会社組織では、それが特に支障もなく、当たり前のように行われていました。

しかし、時代は変わり、市場のグローバル化、意識の多様化、働き方改革の推進と、企業を取り巻く環境は過去と大きく異なる様相を見せ続けています。
特に、労働人口の減少、社会構造の激変は、企業の将来に大きく立ちはだかる障壁となっています。

そうしたなかにあって、人材育成に何の戦略も持たない企業が自然淘汰されていっても不思議はありません。
入社してくる社員が、あるいは現在自社に在籍している社員が、企業を支える力強い戦力となるかどうかは、企業の「人材育成」への取り組みにかかっています。
ここでは次世代に通用する人材を育てるための人材育成とはどのようなものなのか、どうすればそれを実現できるのか、現在の企業が置かれている状況とともに解説していきます。

人材育成で目標設定すべき理由

人材育成で初めに考えるべきものとされるのが、「目標設定」です。最初に人材育成の大きな枠組みと、それを果たすための重要なポイントとなる目標設定の意義について解説していきます。

人材育成の目的に向けた取り組み

人材育成とは文字どおり人を育てることを指しますが、ただのヒトではなく「能力を持つ、役立つ人」を作り上げるのが目的です。

企業における人材育成は、"長期的視野に立って現実に企業に貢献できる人材を育成すること "と定義されます(※ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典より)。単に教育や訓練を与えることが人材育成ではなく、人間としての成長を遂げ、さらに企業へ還元できる結果をともなうものでなければなりません。

各社員には、固有の人格があり、個人としての意思があります。元から備わる資質を活かしながら、企業にとって役立つ「人的資源」へと育てていくのが企業の人材育成です。

企業が人材育成に取り組むにあたっては、「何のための人材育成か」を明確にする必要があります。業界や業種によって企業の形態がさまざまである以上、必要となる人材の質も異なり、また最終目的も変わってくるでしょう。

個々にアイデアを創出し、新規ビジネスを立ち上げていく人材なのか、既存事業を強化できる人材なのか、企業のニーズはそれぞれです。

現在の多くの企業は、自発的・自律的な人材を求める傾向にありますが、場合によってはより協調性の高い人材を重視するという企業もあるでしょう。

何をもって人材育成のゴールとするのか、企業が経営上のコマとしてそろえたい人材はどのようなビジネスパーソンなのかといった点を突き詰め、目的に叶う取り組みをしていく必要があります。

人材育成で目標設定が重要である理由

企業の経営安定、業績の向上、永続性の確保といった目的に続く道のりは果てしなく、それに貢献できる人材の育成もまた長いプロセスをたどります。

目標設定が人材育成で重要なのは、長期間にわたって社員のモチベーションを維持しながら、確かな方向性へと導くからです。

「道しるべ」がなければ人は道に迷います。また目指すべきものがなければ、人は方向がわからず動けません。目標は各段階における句読点の役割を果たすととともに、次のステップへと促す推進力ともなります。

目標設定をすることで、人材育成のスケジューリングが容易になります。また、その時点での到達度・習熟度の評価も目標設定がなされていなければ、評価基準が定まりません。

目標設定をすることによって各社員の習熟度を把握できるようになり、適材適所の配置が可能となります。社員のレベルを正しく知り、その能力を適切に活用するためにも目標設定が有効な施策となります。

こちらの記事では人材育成における目標設定のポイントや具体例をさらに詳しく解説しております。
ご興味のある方はご一読ください。

人材育成における適切な目標設定とは? 人材育成における適切な目標設定とは?

企業と社員の視線の統一

社員には目標設定により、日々の業務や学びにおいてのモチベーション向上が期待できます。目標があることで常に何のために学び、なぜこの作業を行うのか、という視点を意識し直す機会が得られます。

それと同時に、適切な目標設定は企業と社員の「視線の統一」をもたらします。実現可能な目標設定の手法として注目されるOKR(Objectives and Key Results)では、企業側と社員側それぞれが目標(Objective)とそれを達成するためのカギ(Key Result)を設定します。全体を統合することで、企業内でブレのない目標設定が実施できます。

プロティアン・キャリア――自分自身を柔軟に変化させる

現代のビジネスパーソンのキャリア形成においては、ひとつの企業文化にのみ通用するスキルではなく、多様化する社会に柔軟に対応できる能力を身に着けることが求められています。

この考え方が「プロティアン・キャリア(Protean Career)」です。社会環境の変化に即応できる人材は、企業の将来にとっても心強い存在となるでしょう。プロティアン・キャリアを形成できる人材であれば、企業が求めるその時々の目標をクリアしながら、より高い次元へと自身を引き上げていけるはずです。

今の時代には、過去の会社員にあったような「会社がすべて」という意識は見られません。企業側も、社員の人生を通じた雇用への責任を持てなくなっています。
そうした時代にあっては社員と組織が相互に成長することが、企業業績拡大と発展、また個人の満足できる人生につながっていきます。

人材育成の成功に向けて押さえるべきポイント

今後労働人口の減少が避けられない日本社会のなかで、企業の人材育成の成否が生き残りを左右しかねません。人材育成の成功を確実なものとするための、押さえるべきポイントを解説していきます。

ポイント1:自社の人材育成の成功とは何かを考える

企業の属する業界や業種、社員層、取り巻く環境によって人材育成のゴールは異なってきます。自社にとっての人材育成の成功が何かを捉えきれていないと、どのような施策を打っても徒労となるおそれがあります。

自社に貢献してくれる人材が誰なのかがわからなければ、いつになってもゴールは見えません。

企業の人材ニーズとは現在抱えている企業としての課題を解決し、また将来にわたって課題の発生を未然に防ぎながら、企業の成長と存続を支えてくれる人材です。それを得るためには、自社の詳細にわたる分析が十分になされ、強みから弱点、課題の洗い出し、さらに将来への予測までが明確になっている必要があります。

人材育成は他社の真似事では成功できません。企業によってすべての事情が異なる以上、人材育成の成功もまた自社なりであることを理解し、目指すべきゴールを明確にしていきます。

ポイント2:人材育成はカスタムメイド

人材育成の成功のあり方がそれぞれの企業によって異なるということは、そこに至る手法も千差万別であるといえます。

人材育成はその企業に合わせたカスタムメイドでなければならず、これが絶対という方法はありません。

人材育成の実施に際しては自社の現状から見て実行可能であり、もっとも効果的と思われる方法を選択します。社員の成績や企業全体の業績、周辺情報を総合的に観測しながら効果検証を行い、軌道修正しながらより洗練された人材育成が行われるように改善していきます。

自社の社員層によっても、人材育成の方法は変わってきます。若手が多い、中堅層が弱いなど、社員について抱える事情もさまざまです。

人材育成は必ずしも新入社員や若手のみを対象とするわけではなく、企業全体を向上させていくためには、各層に対しての取り組みが求められます。

そのため、どの社員に対してどの方法にするのか、それぞれの層を対象にした人材育成の施策を考えるのを基本とします。業務との兼ね合いを見ながら、無理なく継続できるやり方で実行していくという姿勢が成功につながります。

ポイント3:社員自身による「自律的な人材育成」を促す

「人材育成は担当部署に任せてあるから」という企業は、社員がうまく育ちません。

社員が所属する現場はもちろん、トップや管理層も今自社がどのような取り組み方をしているのかを理解していることが、社員と企業双方の成長に導きます。

人材育成についての意識の浸透は、育てられる社員とそれを取り巻く環境全体に良い影響をもたらします。人材育成では、育てる・育つ双方に自発性が必要です。

教える側も自律性を持つことで能力強化につながる

教育担当の社員が義務として指導をすれば、教えられる側も義務として受け取ります。教えてもらった部分は覚えるかもしれませんが、おそらくはそれ以上の発展は望めないでしょう。

教える側が自発的により良い指導を考えるようになれば、指導スキルが身につき、自分自身の能力が強化されます。人材育成で自律性が求められるのは、指導される側だけでないことを企業が理解しておかなければなりません。

「ヒューマンリソース」ということばが一般化し、社員は企業が有する重要な経営資源として見られるようになりました。企業にとって、能力のある人材が宝であるのは今も昔も変わりはないでしょう。

教えられる側は自身を「人材育成」するという視点が重要

一方で社会の様相は大きく変化しています。大企業に入社すれば一生安泰という時代は過去のものとなり、企業がどれほど社員を大事に思っていても、最後まで雇用を継続させられるかは誰にもわかりません。

個人も自身での「人材育成」を考えなければならない時代です。

CDP(Career Development Program)は、数年・数十年単位で個人の能力開発を考えるという育成プログラムです。

企業が期待する人材のイメージと個々のキャリアビジョンを元に、中長期的計画を組んでいきます。社員は自分がどうなっていきたいのか、そのために必要な能力は何かを主体的に考えます。社員の意志決定に沿いながら企業側が業務や配置を行うことで、両者の信頼関係が強まりエンゲージメント向上に貢献するでしょう。

現代社会においては企業と社員個人が良好なバランスを保ちながら、それぞれの成長を実現していくことが理想的な人材育成といえます。

企業の人材育成は一部署や一担当者によってなされるものではなく、企業全体と社員自身が担うべきものなのです。

こちらの記事では人材育成のポイントをさらに詳しく解説しております。
ご興味のある方はご一読ください。

企業における戦略的な人材育成のポイントとは? 企業における戦略的な人材育成のポイントとは?

人材育成における企業の課題とその対策

人材育成の重要性を痛感しながら、思うように進められていないという企業が大半です。人材育成で企業が抱える課題と対策を解説していきます。

企業が人材育成に抱いている「不安」や「課題」

多くの企業は、自社の人材育成が激変する社会の流れに合致していないことを自覚し、戸惑いを見せています。

すでに終身雇用制度は事実上崩壊しているにもかかわらず、既存の人材育成イメージから抜けきれておらず、厳しさを増すビジネス市場に対応できる人材が育っていないのが現状です。自社の人材育成システムに不安を抱きつつ、次の一手が探せずにいる企業の様子が伺われます。

いかにして自律性を持たせるか

教育制度の度重なる改変のなかで育ってきた新世代と、企業のメインとなっている旧世代の間で人材育成に対する共通認識が持てないまま、これまでとあまり大差のない手法がくり返されています。

自律性のある社員に育ってほしい、人材育成においても自律的に動いてほしいという企業側の希望が目立つ一方で、企業文化とどのようにバランスをとっていくのかという点も課題となります。

転職に抵抗感を持たない若い社員は、思うように成長ができない企業に魅力を感じず、離職を考えるようになります。

人材育成の重要性を認識しながらも具体策が見つけられず、手をこまねいているうちに貴重な人的資源が他社に奪われている可能性もあります。

「働かないおじさん」問題

社会的な労働力の減少にともないシニア人材への期待が高まるなかで、年齢層の高い社員に対する課題もクローズアップされてきました。

高年齢者雇用安定法の改正により、65歳までの安定した雇用が企業に対して求められています 。経験と熟練したスキルが次世代に引き継がれるチャンスでもありますが、一方で「働かないおじさん」問題などが浮上しています。

急速な技術革新によって労働環境が変わり、業務への意欲を失ったシニア層がただひたすら定年まで安住を決め込んでいるといった問題に頭を抱える企業は少なくありません。やる気のない姿は、ただでさえ調整が難しい世代間のあつれきを生みだし、若手社員の不満を蓄積させます。

(注)「働かないおじさん」とは__
働いていないように見える、もしくは給与に見合った生産性が出せていない従業員の通称
(本編での「働かないおじさん」は、年齢・性別を限定するものではありません)

常態化する課題を「解決」するためには?

社会情勢は一企業が変えられものではありませんが、それを理由に自社の課題解決に取り組まずにいることは企業存続に関わります。解決されない課題は常態・肥大化し、さらに手に負えないものとなっていくでしょう。

現状把握と業務の効率化

いかにして解決するかを考えるときには、まず現状把握に着手することから始めます。

自社の現状と課題を整理し、個々に分離していくことで、人材育成のなかで解決できるものとそうでないものに分けることができます。

人材育成に腰をすえて取り組むことができない要因のひとつによく挙がるのが、「時間の不足」です。日常業務に追われて、指導に割く時間が十分にもてないという声が聞かれます。そもそも時間がひっ迫するのは、人手が足りていないからであり、人材育成が進まなければ時間の余裕ができないというまるで「いたちごっこ」のような状態が続きます。

時間の捻出のためには、企業全体の業務を見直し、ムダを省いて効率を上げていくしかありません。打ち合わせ・コミュニケーションのとり方の工夫や人員配置の見直しも、時として有効に働く場合があります。

リカレント教育の活用

先にもふれた技術革新への対応や、シニア人材の活用、「働かないおじさん」問題への対策としては、リカレント教育の活用があります。

リカレント教育は生涯にわたって学びと就労をくり返す学習姿勢が本来の意味合いですが、日本社会では欧米のように学習と就労期間を分ける考え方は適応しません。企業で働きながら必要に応じ、さまざまな学習手段を用いて各人が学習に取り組んでいくというのが一般的です。

企業はそうした自発的取り組みへのサポート体制を整備し、企業の内外で社員の学びを促していきます。

育成される側から見た人材育成の課題

労働政策研究・研修機構が労働者に対して実施した「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査結果」 によると、300人以上の企業に勤める従業員の約2割が自発的な学びを行っています。さらに自発的に能力開発・自己啓発をした人の約8割が業務に役立ったと回答しており、人材育成において企業が求める自律性の大切さが理解されます。

ただこうした自律性のある学びについて、正社員の半数以上が費用補助を受けているのに対し、契約社員・パートタイマー・アルバイトの7割以上には補助がありません。また学習への取り組みに対する周囲の協力は希薄な傾向があり、金銭面・労力面でのサポートは十分とはいえない様子です。

能力開発への意欲は正社員、それ以外の雇用形態を問わず一定以上見られますが、企業規模・雇用形態により環境やサポートに大きな違いがあり、人材育成の観点から企業の貢献不足が伺われます。

リカレント教育への理解を進め、どのような補助ができるのかを検討していく必要があります。

こちらの記事では人材育成における課題とその対策についてより詳しく解説しております。
ご興味のある方はご一読ください。

企業を悩ませる人材育成の現状と課題 取り組むべき対策もあわせて解説 企業を悩ませる人材育成の現状と課題 取り組むべき対策もあわせて解説

人材流出と人材育成――エンゲージメント指標の活用

人材の流出は企業にとって悩ましい問題であり、大きな損失です。

特に若手から働き盛りの層では転職でも売り手市場の傾向が続いており、企業側は社員の離脱について常に危機感を持たなければなりません。

人材育成を人材流出と関連させて考える際に、参考となるのが「エンゲージメント指標」です。エンゲージメント指標は、企業と社員の結びつきの強さを測定するものです。

社員が企業に対して自分の成長の可能性をどれだけ感じているのか、企業のビジョンと自分の将来性をどのように重ねているのかを知ることで、離職のリスクを回避する施策への材料となります。

エンゲージメント指標を基に企業のニーズ、社員個人のニーズをすり合わせながら、両者が納得できる人材育成プランの構築を目指します。

人材育成を制する企業が未来を担う

人材育成は一朝一夕で成果が見えるものではなく、だからこそ今すぐできることから着手すべきといえます。

人材の不足を嘆いていても状況は好転しません。自社に適した人材育成の方向性を探すことでしか、苦境を乗り切る手立てはないのです。

どのような好人材を得られたとしても、自社への貢献の道筋が明確でなければ、企業にとっても本人にとっても不本意な結果となる可能性があります。人材育成について企業とそのなかにいる各人が理解し、現実的に実践可能な方法で能力向上を目指していくことが求められます。

参考:
厚生労働省|高年齢者の雇用
独立行政法人労働政策研究・研修機構|人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査結果(労働者調査)(PDF)

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