元同僚がターゲット 注目のアルムナイ採用とは

元同僚がターゲット 注目のアルムナイ採用とは

これまであまり日本では親しみのなかった「アルムナイ」というキーワードが聞かれるようになってきました。アルムナイ採用とは、退職や転職したOB・OGなどを採用の対象とした手法です。在籍経験があることからパフォーマンスの予測がしやすく、信頼性も高いこの層を改めて迎える施策が今、注目を集めています。ここでは、アルムナイ採用のメリットや導入するためのポイントについて解説します。

アルムナイとは

アルムナイは英語の「alumni」で、alumnusの複数形で、「卒業生、同窓生、校友」を意味します。採用におけるアルムナイとは企業を退職や転職したOB・OGなどのことを指し、アルムナイ採用とは退職もしくは転職した人材を再雇用する採用手法です。アルムナイ採用に積極的な企業では、独自のアルムナイ制度を構築し、離職者との継続的なコミュニケーションを維持しています。いつでも再就職可能な下地が整えられているため、離職者も抵抗なく復帰することができ、速やかな人材採用が可能です。

アメリカの大手SNSでの調査では、離職者の再入社の割合が2018年上半期には3%近くに達しており、過去10年間で2倍以上となりました。なかには、十数パーセントもの値を示す企業も存在しており、採用でイニシアティブをとる戦略的な取り組みとして多くの企業が導入しています。また、アメリカの大手ソフトウェア企業の調査では、全米企業ランキングTOP500の企業のうち、98%が何らかのアルムナイ制度を導入しているとされています。

日本でも近年、グローバル企業の日本国内での導入を皮切りに、人材獲得の有効策としてアムルナイ制度を採用する動きが見られるようになってきました。

アルムナイが注目される背景

日本のアルムナイ採用の現状

厚生労働省が2014年に実施した「出産・育児等を機に離職した女性の再就職等に係る調査研究事業」によると、再雇用制度を設けている企業は全体では 16.7%ですが、従業員数1,001人以上の大企業では 36.4%が再雇用制度を実施しています。再雇用の際の雇用形態については、「正社員での採用」、「一定期間後に条件が合えば正社員雇用とする」を合わせて約80%です。やや古いデータではありますが、この時点ですでに再雇用について企業が意欲的に動いていたことがわかります。

復帰後の職場は、「原則、退職時の職場に復帰する」が 28.7%、「本人の希望、人員不足の職場等により、調整して配属する」が63.9%と、離職時とは異なる業務に就く場合が多いと考えられます。

ただし、この調査データには、育児や介護など、やむを得ない事情で離職した社員の「ジョブ・リターン」が多く含まれると見られます。ジョブ・リターン制度は企業によっては転職者も含まれますが、再雇用制度が存在しても、退職理由に関わらずネットワークを構築して継続して退職者とコミュニケーションをとるといったアルムナイ制度が整備されているとは限らないようです。

アルムナイ活用が注目される理由

現代の日本では終身雇用制度が崩れつつあり、以前に比べ人材の出入りが多くなりました。転職が当たり前のように受け取られる時代にあって、労働市場の流動化が進んでいます。また、少子高齢化による労働人口の減少から、働き手の確保はどの業界でも容易なことではありません。

そのような状況下において、企業では多彩な採用手法を駆使して優秀な人材の確保に努めなければなりませんが、自社戦略にマッチする人材の採用も容易なことではありません。そこで、事業内容や企業風土などを既に理解している人材であるアルムナイに熱い視線が注がれるようになりました。

アルムナイ採用のメリット

短期間で優秀な人材を雇用できる

求人広告掲載から始まる人材採用とは異なり、選考回数が少なくて済み、時間がかかりません。離職者と継続的にコミュニケーションを取り続けていることで再入社などに対する意志の確認がとりやすく、短期間で、スキルが保証された人材の雇用が可能です。

自社の業務や文化に精通している

自社の業務内容や社風を理解しているので、即戦力として活躍してもらえる可能性があります。指示の意図を正しく汲み取る下地が共有されているため、新人に対するように詳細まで説明する必要がありません。

育成コストが抑えられる

新入社員に対するような教育・研修の必要がなく、育成コストが軽減されます。

実績があるので信頼ができる

過去に自社で勤務していたことで、その人柄や能力についての情報が蓄積されています。人間性や実績が保証されており、安心して仕事を任せることができます。

社外での経験や人脈の活用

自社以外で働いた経験、外部で積み重ねられたスキルや知識が、自社の事業に新たな視点を見出す可能性があります。同時に新たなネットワークを築いていることも多く、そのネットワークを活かした仕事の展開にも期待がもてます。

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アルムナイ採用導入のポイント

アルムナイ制度の確立

アルムナイ採用の実施には、一度自社を離れた人材の復帰スキームを制度として確立しておくと、社内外へのアピールや運用がしやすくなります。戻ってくる人材の受け入れについて全社的な理解を得るため、あるいは離職した社員が将来的に転職や職場復帰を考えた際に選択肢として想起してもらうためにも、制度の認知度を高める活動は重要です。

戻る意志のあるアルムナイが、躊躇なく復帰に踏み出せる環境を提供することで、アルムナイ採用をスムーズに進められます。

アルムナイへの積極的な施策

アルムナイ採用で人的資源の充実を図ろうとする場合、アルムナイ自身からのコンタクトを待つ消極的な姿勢では自社の採用ニーズに応えられません。

離職者に向けた「アルムナイネットワーク」づくり、アルムナイ同士の交流の場の提供、アルムナイへの定期的コンタクトなど、海外などの先行事例を参考に、自社に合わせたリレーションシップ保持の施策が有効です。

また、雇用における出口管理を強化し、すべての離職者が円満退職できるように図っていくことも重要です。

既存社員の離職者に対する意識改革

古い体質の組織では自社に残る社員が、離れていく人に対して、裏切り者・離脱者といった視線を向ける場合があります。旧時代的な体質ではアルムナイ制度がうまく働きません。再雇用の受け入れの際に、周囲との軋轢を生じさせないためにも、離職者に対して既存の社員は意識を変えていかなければなりません。

アルムナイとの多様な関係性

アルムナイへのアプローチには、柔軟性と多様性を持たせる必要があります。例えば、プロジェクトの立上げのために期間限定の契約社員として採用する、フリーランスの業務委託として必要なタイミングで業務を依頼するといった関係性も視野に入れると、必要時に適切な人材を迅速に見つけることができるかもしれません。

アルムナイ採用を成功させるポイント

自社で活躍した人材を新たに迎え入れるアルムナイ採用には、これまで見てきたように数多くのメリットがあります。しかしアルムナイ採用を成功させるためには、アルムナイを再入社に導く戦略が必要となります。

アルムナイへのベネフィットの提供

アルムナイ採用を成功に導くためには、離職者といかにつながりを保てるかということがカギになります。アルムナイ制度を積極的に取り入れている企業では、さまざまな工夫をしながら施策を進めています。

アルムナイが自社に対する興味を失わずにいるために、企業として何ができるのかを考えていかなければなりません。例えば、最新の情報を提供するセミナーや勉強会の開催、SNSを使った情報発信などが考えられます。

さらに、現在どのような人材を求めているのかを、キャリア形成サポートの体制などと併せながら伝えていくといった施策が必要です。アルムナイが「戻りやすい」道筋をつける意味で、アルムナイ同士の交流会を企画するのも有効策となります。

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アルムナイ採用成功のヒントとなる事例

  • 世界120ヵ国に顧客をもつグローバル総合コンサルティング企業では、約25万人の元社員が登録するポータルサイトを運営。求人情報の検索、アルムナイ同士・社員との協働を推進する機能を搭載している。
  • 日本有数の広告代理店では、2019年から公式のアルムナイネットワークを開始。2020年10月時点で500人が登録。限定情報の提供、メッセージ機能、登録メンバーの近況確認機能などが搭載されている。
  • 国内大手総合商社では、2019年にアルムナイネットワークを構築。アルムナイと現職にある社員が交流を図り、新機軸のビジネス展開を目指している。

まとめ:離職者が貴重な経営資源になるアルムナイ制度

日本国内でもすでにアルムナイを活用し、優秀な人材採用の強化を進めている企業があります。

ポイントとなるのは、自社を離れる人材と継続的なリレーションを保っておくことができるか、という点です。離職する人材を完全に手放すのでなく、退職後にどのようなベネフィットを提供しつづけることができるのかについて考えてみましょう。アルムナイに対する働きかけ方法、戻りたい気持ちを起こさせる企業としての魅力の発掘、発信など、検討課題は数多くあります。

しかし、即戦力として充実したスキルをもつアルムナイは、企業運営にとって貴重な人材候補です。人材採用に悩んでいる企業にとっては、検討する価値のある採用施策であるといえるでしょう。

参考:
出産・育児等を機に離職した女性の再就職等に係る調査研究事業|厚生労働省 

     

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