海外こそエンジニアの宝庫 韓国編

海外こそエンジニアの宝庫 韓国編

シリーズ:
海外こそエンジニアの宝庫


労働人口の減少は、ITエンジニア人材においても例外ではありません。 昨今では、海外エンジニア人材の採用により、ITエンジニア不足に対する活路を見出す企業も増えてきました。 今後の日本のIT産業の発展に欠かせない「海外エンジニア人材」の現状を、複数回にわたり詳しくレポートしていきます。


第1回 中国編
第2回 インド編
第3回 韓国編
第4回 台湾編
第5回 新興国編

漢江の奇跡から優良コンテンツ輸出国家へ

1960年代前半まで世界の最貧国グループに属していた韓国が、1960年代後半以降、目覚ましい高度経済成長を迎えた様子は「漢江の奇跡」と呼ばれ、香港・シンガポール・台湾と並び「アジア四小龍」とも例えられました。

現在、韓国は世界名目GDPランキングで12位(2017年)であり、アジアでは中国、日本に次いでその存在感を示しています。

韓国は、国土面積が日本の約25%、全人口はおよそ5,000万人です。
平野部が少なく国土の約80%が山野部または農地、国民の約半分が首都のソウルに居住しています。狭い国土面積と少ない人口にも関わらず、グローバルカンパニーを創出し、K-POPの人気が世界を席巻している韓国は、次なる”コンテンツ”としてITエンジニア育成にも力を入れているようです。

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狭い国土、少ない人口
国際舞台では知能で勝負する韓国

初代の大統領の李承晩が、米国プリンストン大学で博士号を取得した人物ということも影響しているのか、韓国は強烈な学歴社会です。

韓国の高等教育は1980年代から1990年代に急速な拡大を遂げましたが、特に1999年に開始された「頭脳韓国21(BK21)」という事業がさらにこの拡大を後押しする形になりました。
BK21とは、世界水準の研究大学の育成と地方大学の競争力強化を目的に、特定の大学に対して毎年総額2,000億ウォン(200億円)を7年間交付する補助金事業です。
補助金交付先は73大学に及び、これらの大学には、米国など優れた外国大学との共同研究や大学院生の派遣、教授の招聘などの他教育機関との交流に加え、専攻別入試の廃止や定員数の見直し、専門大学院の開設などの大学改革が求められます。

このような国を挙げた取り組みの結果、「THE世界大学ランキング」上位200位以内に韓国から4大学がランクインしています。
ITエンジニア創出の観点で見ると、「TOP UNIVERSITIES」(イギリスの大学評価機関クアクアレリ・シモンズ社が毎年9月に公表する世界の大学ランキング)のComputer Science & Information Systems部門に、TOP50に2大学がランクインしています。

▼THE世界大学ランキング2019

引用:TIMES HIGHER EDUCATION World University Rankings 2019

63位 ソウル大学校(SNU)
82位 成均館大学(SKKU)
102位 KAIST(旧称:韓国科学技術院)
142位 浦項工科大学

※日本からは、42位 東京大学、65位 京都大学がランクイン

▼TOP UNIVERSITIES2019 
 Computer Science & Information Systems部門

引用:Quacquarelli Symonds  TOP UNIVERSITIES 2019 World University Rankings 2019

34位 KAIST(旧称:韓国科学技術院)
40位 ソウル大学校(SNU)

※日本からは、20位に東京大学がランクイン

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自国の経済史を色濃く反映する韓国のIT人材事情

韓国では、自国の産業の変遷に沿ってIT人材マップも変化しています。

半導体メモリDRAMの世界シェア約半数を占める韓国では、従来はコンピュータ工学専攻のハードウェア・組み込み系のエンジニアが大多数を占めていました。
近年では、韓国政府がコンピュータサイエンスを重要視するようになり、ソフトウェア系エンジニアも増えてきています。
そしてこのソフトウェア系エンジニアの多くが、Naver・Kakao・Coupang等のインターネット大手企業に勤務していることも特徴です。

現在、韓国国内のITエンジニアの数はおよそ40万人です。
今後は年間約1万人、すなわち2-3%程度で成長していくと予想されています。
プログラミング言語については、大学と産業界どちらにおいても、引き続きC++/Javaが主流です。

旧財閥・大手に就職人気が集中
しかし内需の受け皿は小さく人材は海外へ

強烈な学歴社会として知られ、4年制大学進学率は約64%(2016年)、しかしながら就職率は約64%(2015年)です。
これにはサムスン電子やLG電子、現代自動車など大手財閥系企業に就職人気が集中しているにも関わらず、その求人は少ないことが挙げられます。

実際、韓国では従業員300人未満の中小企業が国内の労働者全体の約87%に相当する1,226万人を雇用している(2010年時点)というデータもあります。
就業放棄を含む実質的な若者の体感失業率は20%を超えるとも言われ、自立する年齢を迎えても親からの経済的援助を受ける「カンガルー族」も社会問題化しています。

韓国国内での就職チャンスが少ないため、若年層が海外での就職を選ぶケースも増えてきています。
貿易振興のために設立された韓国政府機関「KOTRA」が主催する海外企業と韓国の若者のジョブマッチングイベントには、日本からも100社以上が参加しています。

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既に日本企業でも人気の韓国IT人材
今後は地方大学などTier2層への接触が必要

韓国のITエンジニアの平均給料は、現在日本円にして450万円程度です。
しかしスタートアップの台頭でweb開発のバックエンドエンジニア、またはデータサイエンティストの年収は、日本円にして800-1,000万円程度に上がってきています。

日本語を学んでいる人材が比較的多いことやカルチャーフィットの観点から、かねてより韓国IT人材は日本企業から人気が高いです。
ただし、韓国国内大手企業や外資系IT企業も狙うTier1層の人材は、早くから米国など海外で就職することを希望していることも多く、英語圏への留学なども盛んです。
Tier1層は韓国大手企業と欧米メジャー企業をも巻き込んでの獲得競争になっており、ここに日系企業が割り込んで行くのは至難の技と言えます。

今後は、韓国内の地方優良大学と連携し在学中からインターンシップの受け入れを行うなどのキャンパスダイレクトリクルーティングや、大手企業所属ではないものの韓国国内で地道に開発経験を積んできたITエンジニアをコーディングスキルで評価する選考手法の導入で採用していくなど、Tier2層への接触と適正な選考評価軸を持つことが採用担当者には求められそうです。

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